Oct 31, 2014

スヨン主演 MBC 『私の人生の春の日』 ドラマレビュー (OhmyNewsほか)

死を選んだ『私の人生の春の日』、ハッピーエンディングはなかった

[ドラマレビュー] その利他的な結末、完璧ではなくても、十分に暖かい

2014.10.31 09:02
 
 

よく‘終わり良ければすべて良し’などと言われる。たとえ過程が少し不十分だったとしても、結果がよければ喜んで許されるという意味だ。反対に過程がどんなに立派だったとしても、結論がぱっとしなければすぐに人々の脳裏から消えたり、ずっと笑いものにされる、非常に運の悪い(自ら招いたものではあるが)作品になることもある。 
 
映画やドラマの結末に対するその是々非々は、いまや公然と行われている。私たちは時に不快な心持ちで映画『ミスト』の奇怪な結末を振り返ってみたり、ドラマ『パリの恋人』や『屋根を突き破ってハイキック』などの衝撃的な結末をいつまでも根に持ち続けたりもする。これらの作品は結末が過程を完全に食った典型的な例として挙げられたりする。

 

生涯を終えたイ・ボミ、しかし虚しい最後ではなかった


▲‘私の人生の春の日’ イ・ボミの死はあるものには新たな生の始まりになってくれた。
彼女のこの5年間の生も同じやり方でつむがれた。 (C)MBC

ならば、幕を下ろしたばかりのMBC水木ドラマ『私の人生の春の日』はどちらだろうか。一言で言って、このドラマが下した結論は多くの人が願っていたことを満たすには少し不足かもしれない。結局、愛する人たちは再び離別を迎えなければならず、その喪失感はそれまでよりさらに大きくなったのだから。 
 
残念ながら、みんなが笑って幸せになる結末はこのドラマにはなかった。イ・ボミ(チェ・スヨン)は家族らの願いを聞き入れず人工心臓移植手術を拒否し、代わりに自身の臓器を誰かに残すことで生涯を終えた。カン・ドンハ(カム・ウソン)は再び妻を失うことになり、子どもたちは新しい母を迎えることができなくなった。他の家族のものたちもまた計り知れないほどの悲しみに陥ったことは明らかだ。 
 
それまでの幸せは、ただの夢だったのか。振り返ってみると、みんな実にいろんなことがあった。かげろうのようにかすかに立ち上り蜃気楼のように消えてしまった幸せ。しかし、死んで行くイ・ボミにカン・ドンハが伝えた言葉によれば、すべてが砂漠の上の砂塵の風のようにあっけなく消えてしまったわけでは決してなかった。 
 
『私の人生の春の日』の価値は、生の意味について改めて考えさせてくれたことにある。真の利他の人生、陳腐な表現だというが実際はその深い内を知らない、まさにそのことについてである。憐憫が愛に変わり、その愛が再び包括的な意味の人間愛に発展する過程。このドラマの展開過程は非常にドラマチックだったが、誰しも簡単に言葉にするのが難しい深い感動を与えてくれた。

 

新たな関係の始まり、イ・ボミが残したあたたかく美しい遺産


▲ ‘私の人生の春の日’ 生の永続性に対する自覚のためだろうか。
手術室に向かう妻の姿を見つめるカン・ドンハの表情が玄妙だ。 (C)MBC

『私の人生の春の日』の内容は一見平易で、その過程は退屈で、結論もみんなを満足させることができるほどのものではなかった。しかし、あれほど静かにばかり見えたこのドラマが描いたものは、どのドラマより少なくなかった。 
 
私たちが生きていく中で直面するかもしれない緊迫した瞬間、到底受け入れることはできないであろうとんでもない瞬間、『私の人生の春の日』にはそのすべてが総合ギフトセットのように入っていた。誰かにはそれがプレゼントではなく災いのように思われるかも知れないが。 
 
『私の人生の春の日』はそれらにぶつかった彼らの多彩で複雑微妙な感情の糸をとても繊細でありながらも成功的に解きほぐした。家族という垣根、あるいはそれを脱して各々個人として思いがけない瞬間に対処する成熟した姿勢は(時には過度に理想的に感じられる場面もあったが)十分模範となるに値するものだった。 
 
イ・ボミは結局、死を選択した。私たちが期待していた幸せなハッピーエンディングはどこにもなかったが、ドラマのいたるところで新たな関係がその第一歩を踏み出した。家族は互いを顧みるようになり、その‘家族’というものに生物学的な意味は言うまでもなく、それを脱した関係までも込めることができるようになった。 
 
私たちは『私の人生の春の日』の結末をどう考えるべきか。しかし、それがそんなに重要だろうか。このドラマは私たちの耳に静かにささやくばかりだ。‘生と死にあまり意味を置くな’と。それが過ぎ去ったあとの‘足跡を記憶せよ’と。そして‘愛と尊重、理解と尊敬、憐憫と利他の意味を改めて考えてみよう'と。それで十分ではないか。

ハン・ギョンヒ

credits & source : OhmyNews
translation : jiji3104


“慰め慰められることが特に多かった2014年、『私の人生の春の日』はマッチャン(非現実的、突拍子のない状況)が全くない、善良な登場人物たちの善良なドラマとして、水木ドラマの視聴率で不動の1位を維持した。まさに清浄ドラマである『私の人生の春の日』は、善良なストーリーだけでも成功することができるという事実を立証し、新たな可能性と意味を見せてくれた” - NEWSPIM

 

“刺激的で扇情的なマッチャンドラマが幅を利かせている最近とは違って、愛・尊重・家族愛などで構成された『私の人生の春の日』はこれからも忘れることのできない心温まる物語として視聴者の心の中に残るだろう” - 市民日報

 

“MBC水木ドラマ『私の人生の春の日』は大人のための温かな一編の童話だった。「毎日毎日が幸せというわけではない。けれども幸せなことは毎日あるんだよ」というこぐまのプーさんの台詞のように、『私の人生の春の日』はそれぞれの生の中の幸せな瞬間である‘春の日’を物語り、お茶の間劇場にあたたかな感性を伝えてくれた” - MBN

 

“MBC水木ドラマ『私の人生の春の日』の中のイ・ボミを演技するチェ・スヨンから華麗なガールグループ、少女時代の姿は見出せなかった。完璧とは言えなかったが、期待以上の演技力を見せてくれたチェ・スヨンは、ドラマをリードしながら今後の‘女優チェ・スヨン’としての可能性を証明した” - MBN

translation : jiji3104